デューデリジェンス(DD)は、Due(当然の)とDiligence(努力)といった言葉からなる造語です。一般的には、ある事業などに先立ち、当然実施すべき調査などを意味します。
 M&Aでも同様に、合併や買収といった事業活動に先立って行うべき詳細な分析・調査をいいます。そのため、デューデリジェンスはM&Aのプロセスの中でも、特に重要な位置付けになっています。また、デューデリジェンスは、限られた時間、コストそして人材といった条件のもとで極秘にそして効率的に実施されなければならないものです。
 そこで重要になってくるのがデューデリジェンスの計画的な実施手順の策定と実施です。

M&Aにおけるデューデリジェンスの実施手順について

 M&Aで効率的な実施手順を策定するためには、まずM&Aのプロセスを確認しておく必要があります。M&Aにおける一般的なプロセスは、次のような流れになっています。

①売手側企業におけるM&Aによる企業、事業の売却意思の決定
②M&Aアドバイザー、仲介者など M&A事業者との事前相談と FA(ファイナンシャルアドバイザー)契約
③事前開示情報の作成と買収候補探し
④売手側・買手側双方トップによる面談・交渉
⑤買手候補企業の意向表明と基本合意契約
⑥最終譲渡契約とクロージング(決済)
⑦事業統合(PMI)

 これらM&Aプロセスにおいてデューデリジェンスは、①〜⑤のプロセスで実施される予備的なデューデリジェンス、⑤〜⑥の間に実施される本来のデューデリジェンス、そして⑥のプロセスで実施される事後的なデューデリジェンスがあります。

予備的デューデリジェンス

 予備的デューデリジェンスは、売手側企業から提供された簡単な開示情報をもとに、買手候補企業も自ら売買対象企業の情報を収集し、予備的な企業評価を行います。これらは、具体的な数値で表示することです。そうすることでその後の売買交渉や本格的なデューデリジェンスを効率的に行うことができます。

本格的デューデリジェンス

 M&Aにおけるデューデリジェンスの中核をなすもので、M&Aの成否を左右する重要なプロセスです。ただ、限られた時間、コスト、人員の中で実施するため、効率よく行わなければなりません。予備的デューデリジェンスでの結果を参考にしながら、さらに詰めたデューデリジェンス計画に沿って実施していきます。手順としては以下のようになります。

①詳細な情報収集
②情報の分析
③詳細な調査
④報告書作成
⑤表面化した課題への対処

では、これらの流れをもう少し詳しく見ていくことにします。

具体的な実施計画の策定

まず最初に、具体的なデューデリジェンス実施計画を策定します。これは限られた条件のもとで実施するため、調査対象の範囲の決定(スコーピング)と手順の流れを明確にするためです。調査対象の範囲としては、「ビジネス」、「財務・税務」、「法務」を中心に、必要に応じて、「人事」、「情報(IT)」、「環境」、「知的財産」、「不動産」などを追加します。そして各々のデューデリジェンスの手順を決めます。

詳細な情報の収集

 各調査対象に共通する基礎的調査事項についての情報と、個別調査事項についての詳細な情報を収集し、各担当スタッフ(外部専門家含む)が、厳重な管理下のもと共有します。

詳細な分析と調査

 共通する基礎的分析・調査としては、売買対象企業の組織構造とガバナンス、社内統制といったものはどうか、経営戦略・事業戦略と事業計画そして実施状況の整合性はどうか、といった全社的な事項についての調査から始まり、「ビジネス」、「財務・税務」、「法務」など個別のデューデリジェンスを行います。これらは同時進行することで効果的に実施することができます。

報告書の作成

 一連の分析・調査の結果問題がなければ、各々の分析・調査の結果報告書を、また、何らかの問題点が顕在化した場合、それら問題点まで含めた報告書を作成します。

顕在化した問題への対処

 分析・調査の結果顕在化した問題が解決できない場合、M&A契約そのものの解除、何らかの対処でM&Aが続行できるなら対応策を考えます。たとえば、契約条項の見直し、M&Aスキームの変更、売却価格の引き下げなどがあります。

事後的デューデリジェンス

 本来デューデリジェンスは、最終譲渡契約までに終了させるべきですが、調査対象によっては、クロージング(決済)、あるいは事業統合(PMI)にまでずれ込むことがあります。そうした事態を想定した売手側企業の責任の明確化と対応策の策定そして実施といった手続きが必要になってきます。

 デューデリジェンスはM&Aプロセスの中でも特に重要なものです。ただ、限られた条件のもと極秘に実行していかなければなりません。そのため、綿密な計画の策定と手順に沿って粛々と進めていくことが必要です。