デューデリジェンス(DD)」は、M&Aプロセスで最も重要なものです。この結果によってM&Aが成功するかどうかが決まってしまいます。
「デューデリジェンス」の範囲は広く、「財務・税務」「法務」「労務」「IT」「環境」「不動産」など、さまざまな領域に及びます。
 依頼する内容も高度な知識や経験を要するため、弁護士、公認会計士、税理士といった専門家に依頼することになります。そして、こうした専門家への依頼費用も、その知識や経験にもよりますが、かなりの高額になってしまいます。かといって、知識や経験に乏しい専門家に依頼してコストを抑えたり、まったく「デューデリジェンス」を省いてM&Aを進めても決してよい結果になりません。
 そこで、弁護士などの専門家への依頼費用はいくらかかるのか、今回はこうした費用の相場について見ていきます。

「デューデリジェンス」依頼時の費用の相場は

「デューデリジェンス」の依頼に際し、専門家に支払う費用の相場は、その対象とする領域や内容によるため一律に決められているわけではありません。また、専門家のレベルによっても違ったものになります。
 一般的には、弁護士、公認会計士、税理士などの専門家により「デューデリジェンス」を依頼する場合の費用はかなりの高額になります。法外な金額ではないのですが、その知識や経験に見合った費用ということが主な理由となっています。たとえば、弁護士に「法務デューデリジェンス」を依頼する場合、1時間当たり2〜5万円として、1日7〜8時間監査すれば、日当15万前後〜40万円となってしまいます。
 また、依頼費用体系も、固定性、変動制、両者を合わせた固定+変動制など、さまざまなものがあります。通常、固定+変動の準固定制などが多く、依頼元(クライアント)と弁護士、公認会計士、あるいはこれらの法人との間の協議により決まってくるようです。

「法務デューデリジェンス」の内容と費用の相場は妥当か

「法務デューデリジェンス」に際し、弁護士などの法律の専門家への依頼費用は、通常1日当たり2〜5万円が多いようです。監査する「デューデリジェンス」の契約内容にもよりますが、1日7〜8時間として、日当15万円前後から40万円になってしまいます。このほかに、監査報告書の作成に数日要すると、最低でも50〜100万円超にもなってしまいます。
 ただ、これが高すぎるとは一概にはいえません。取引先との間の膨大な契約内容についてチェックし、違法あるいは不当な条項はないか、逐一精査しなければなりません。
 従業員に対しても、雇用契約や労働基準法に反する行為はないか、残業代の未払いといった簿外債務はないか、そして債務不履行や不法行為による損害賠償訴訟といった偶発債務はないかといったチェックも行わなくてはなりません。
 さらに、「株式譲渡」などでは、株式の内容その他について、会社法や金融商品取引法上の違法行為はないかといったことにまで監査対象は及ぶわけです。

「財務・税務デューデリジェンス」の内容と費用の相場は妥当か

「財務・税務デューデリジェンス」に際して、公認会計士や税理士に支払う費用もほぼ弁護士と同様で、1日当たり2〜5万円となっているようです。総費用も50〜100万円超となります。これに対しても、高いと感じるかもしれませんが、公認会計士や税理士の本来の業務である財務精査や税務申告といったものとは異なる、煩雑なM&Aのための「財務・税務デューデリジェンス」の業務内容を考えれば妥当な額ではないでしょうか。

 一般的なM&Aは、中小企業を中心に行われるようになってきました。こうした中小企業が「デューデリジェンス」を行う場合、「法務デューデリジェンス」と「財務・税務デューデリジェンス」が基本となります。これらだけでも100〜200万円以上になります。これに「ビジネスデューデリジェンス」が加わるとさらに高額な出費となってしまいます。
 ただ、ここで出費を抑えようと、中途半端な「デューデリジェンス」で終わらせたり、まったく実施しないことで、その後のプロセスで問題が発覚し、M&A自体がブレイクしてしまうことも少なくありません。必要経費と割り切ることも必要です。